「え?子ブタ!?!?」





突然のことに
何が起こったかわからない。



どこに子ブタがいるのか。
なぜここにいるのか。





「きゃっ…!?」






自分の目の前に
すっと影ができて、
思わず目をつむった。












「何しとん?お前…」





「え…?」






反射的に瞳を閉じたものの、
思ったような衝撃が来ない。




おそるおそる目を開けると
そこには、






「ススムくん…」









「さすがは山崎さんですねぇ」




あははーと笑いながら、
沖田が歩いてきた。





「沖田さん、これは…」






静かに問いかける烝にも、
沖田はのほほんとして話す。




「イエ、この子どうにも元気がよすぎてですねー。
エサの時間だって言ってるのに」





烝につかまれて、
じたばたともがく子ブタに
話しかけるように言う。





「お騒がせしました。
どうもすみません山崎さん、さん」




そう言って、
子ブタを受け取った
沖田は去っていく。







「なんだった…のかな…」






ひょこひょこと遠ざかっていく
沖田の背を見ながら、
横でその光景を呆然と見ていた
ただただ瞬きをくりかえす。





「相変わらずドンくさいやっちゃな」




「え?」





ぽかんと口を開けたままのは、
烝のつぶやきに
彼のほうを振り返る。





「何か言った?」




「…何でもないわ」





想像していた通りの
の様子に、
烝はふーーと溜め息をつく。



この少女には、何を言っても
まともに返してもらえるわけがないと。





黙ってしまった烝に
はどうしたのかと
次の句を待つが、
突然パン!と両手を合わせて、
あのね、と話しかける。






「今日ね、お祭があるんだけど、
一緒に行ってもらえないかな?」





瞳を輝かせて烝を見つめる。

しかし烝は、




「…いきなり何や、お前は…」





変わらず突拍子もないその発言に、
怪訝な顔をする。




眉をしかめた烝には、




「あっ、ごめんね突然。
やっぱり忙しい…?」




烝の見せた顔に
不安げな表情を浮かべる。



そして烝の答えは、







「…せやな。お前と違て
俺は暇やない」








その一言に、
悲しげに顔を歪ませる。



突然のことだったし、
烝が忙しいのはわかっているけれど。







(百面相…)





目の前で、自分の返答いかんによって
コロコロと表情を変える



先ほどの一言で
すっかり瞳を伏せてしまったが、
ぎゅっと拳を握り締めるのを
烝は見た。






「……せやけど」





ぽつり、と呟く烝の声に、
がわずかに顔を上げる。







「仕事のついででやったら
付き合うてもエエわ」






「……ホント!?」





ぷい、とそっぽを向きながら、
語尾を早口で伝える。



その言葉に、
ぱああっと顔を輝かせた。








「私、絶対お仕事の邪魔しないから!
おとなしくしてるから!」





烝の着物を
くいくいと引っ張りながら、
必死な面持ちで
自分を見つめる



あくまで祭は
ついでだと思い込んでいるに、
烝は心の中でそっと呟く。







(…んなわけないやろ)









仕事があるだなんて、
はなから嘘。




本当は願ってもない誘いだというのに、
それを素直に言えない
烝の口実。







そんなことは知らないは、

心から嬉しそうに 笑う。








Go out together Susumu